- 2005-01-01 (土) 15:02
- ゲーム
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ゲームミュージックなんてゆうと、そこのアナタもお気に入りの一つや二つはあるんじゃないか、てゆうかそれってマイベスト、オールタイムベスト認定だったりしかねないんじゃないか、なんて思うんだよね。
史上に残る名作ゲームなんて大上段に構えたゲーム候補ってゆうのは、特にレトロ性が増せば増すほどガチガチの銀行レースみたいになってきてしまうんだけど、じゃあゲームミュージックはどうよ?ってゆわれると困っちゃう。実際やっぱり歴史に残るゲームミュージックを挙げてみそ?なんて事を言おうものなら結構レスポンスがまちまちだったりするしね。
で、どうしてゲーム性の明確な優勝劣敗に比べてゲーム音楽性のそれがあまり定まっていないのか?という自問自答をしてみると二つ原因があるんじゃないかと思う訳。
一つはゲームミュージックで使用される音源チップが1980年代に入るまで存在しなくて、ゲームの歴史黎明期を支えたあのゲームこのゲームが候補から外れてしまっていること、そして二つ目はそうして1980年代に花開いたゲームミュージックを牽引したアーケードゲームがロケーション(要するにゲームセンターね)側の無理解から、サウンドボリュームが調整されていない、また音質的にも無頓着だったりしたことじゃないのかなって思う。
つまり、技術的、人為的な制限からゲームミュージックへの認知が醸成されるまでに時間がかかり、また土壌ができあがった時にはゲームジャンルやプラットフォームが細分化してしまい意見が分断される事になったのかなって。
なので、あまり細かい所を書き連ねてもしようがないので、いまいちハッキリしないゲームミュージックの歴史を、ざっくり簡単にまとめてみたい。
1970年代。
1971年にコンピュータスペースで幕を開けた業務用テレビゲームの歴史ですが、ゲームミュージックと呼ぶにふさわしいものがあったかという事を考えるとその損益分岐点はシーケンス音の取り扱いによるところが多いんじゃないかと思う。
シーケンス音ってゆうのは“ピ”とかってゆう最強にポピュラーまった電子音のこと。任意の周波数かつある程度の短時間をともなって発音されるものを特にシーケンス音っていいます。
このシーケンス音はピ・ポ・パなんて具合だともちろんゲームミュージックとは言えないと思うんだけど、じゃあそれが組織的故意をもって奏でられたらどう?そう、やっぱりなんとなく音楽かなー?と思えなくもなくなってくるんじゃない?
そういったボーダーラインは1977年タイトーからリリースされた「スペースインベーダー」あたりかなと。このあたりになると単なるシーケンス音の集合体なんだけど聴いているだけで「ああ、インベーダーだ」って感じになってくるし、かといってミュージックかと言われるとどうだろ?ってゆう、実に微妙な所かなと。
1980年代。
まさにゲームミュージック黎明期と言って差し支えない年代。
それというのもこの頃になって初めてサウンド用ICが製品化されるようになり、PSG音源が簡単に実装できるようになってきたからです。それまでのシーケンス音の塊だったゲームミュージックもどきが、和音を伴った音色として認識できるようになったのです。
有名な所では1980年ナムコよりリリースされた「パックマン」はゲームスタートや、特定ラウンド後のアイキャッチなどまさにゲームミュージックとしてふさわしい楽曲を提示しているんだよね。
そうは言ってもそういった局所的な展開だけだとまだゲームミュージックとして確立されたとも言いにくいんじゃないかと。つまりやっぱり全編を通して音楽的な企みが盛り込まれていた方がよりゲームミュージックとして完成度が高いって事になるよね。そして1983年、またまたナムコからリリースされた「マッピー」、「リブルラブル」によって結実する事になって、ここへきてようやく現在と同様にゲームミュージックを語れる基盤ができたとゆう事になったんだよね。
その後1984年にアタリよりリリースされた「マーブルマッドネス」でFM音源が搭載されたことによって、ゲームミュージックはより深みのある楽曲としての趣を増していきました。1985年あたりになるとFM音源+PSG音源をハイブリッドに搭載した基盤・パソコンが出回るようになり、現在でも絶賛されるゲームミュージックというものがこの年代あたりから多く輩出される事になったのは興味深いと思っています。
1980年代で絶対に忘れてはならないのが1984年にアルファミュージックよりリリースされた「ビデオゲームミュージック」。YMOの細野晴臣氏が監修した事であまりにもこの有名なアルバムは「ゼビウス」「ギャラガ」「リブルラブル」等の現在でも色褪せることのない名曲をアレンジしたもので、まさにゲームミュージックが独り立ちした、歴史的な瞬間だったんだよね。ほんとうの歴史はここから始まったんだ!なんて気合入っちゃうくらいにね。
さらに1988年にはPCエンジン CD-ROM2が、そして翌1989年にはFM-TOWNSの登場によってコンシューマ機、パソコンでのCD-ROM標準搭載が決定づけられ、今までのゲーム機に内蔵された音源を使うことそのものの是非さえが問われるようになってしまったんだよね。こうしてPSGによって開闢し、CD-ROMという黒船によってその根本的な存在意義を問われることになった1980年代はゲームミュージックにとってまさに激動の10年だったといえましょう。
1990年代。そして現在に至るまで。
CD-ROMが搭載され、それまでの内蔵音源同士の勝負から、他のあらゆるジャンルの楽曲との勝負を余儀なくされ、実際にそのかなりにおいてゲーム機内蔵音源はゲームと緊密にシンクロする必要のある音以外は一般的な楽曲に取って代わられていきました。
そして1996年、PlayStationの「パラッパラッパー」、1998年、アーケードの「ビートマニア」でいよいよゲーム機内蔵音源の退廃が顕著になり、現在に至ってはCD音源再生時にデータ読み込みができない問題も、ストリーミング再生によってその制限がかなり緩和されました。
今では内蔵音源は携帯ゲーム機・アーケードゲーム機を中心に、家庭用ゲーム機・パソコン等据え置きのできるマシンではほとんどCDないしストリーミングというだいたいのシェア状況になっています。
いずれの場合にせよ、ゲームミュージックは昔のいかにも機械的な音の集合体から、今ではさまざまなジャンル、歓喜や悲哀や情緒までも盛り込んだ楽曲へと進化を遂げています。
しかし、ゲームミュージックが純粋にゲームミュージックたりえたのは1980年代だけだったのではないかとボクちんは思うわけです。
さてそんな歴史的な枠組みとは別にゲームミュージックは大きく二つに分けられます。
それは「オリジナル」と「アレンジ」です。(上の長い枕は本編に関係なくてゴメン)
オリジナルについては読んで字の通りなので説明は省くとしまして、アレンジについては「ビデオゲームミュージック」以来、「組曲ドラゴンクエスト」や「ピアノコレクションズ“FINAL FANTASY”」のようにメジャーな作品を中心にぽつぽつとリリースされてきました。
ここでスルドイそこのアナタなら、あれパソコンはないの?なんて思ってくれていたりするかもしませんね。
そうです、今回はそのパソコンからゲームミュージックアレンジアルバム「PREPRIMER」「PREPRIMER II」をご紹介だよ!
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リメイクが中心となりオリジナル商品開発能力に疑問符がつきつつあるものの、今でも衰えぬ人気を見せる日本ファルコム。そのファルコムを支えてきたゲームといえば「Ys」シリーズ、「SORCERIAN」シリーズだって事をご存じの方は多いんじゃないかと思う。
今回紹介する二枚のアルバムはそんな人気シリーズをフィーチャーしたものなんだ。
一般にアレンジアルバムと言ってよくあるのが、ゲーム内蔵音源のチープさを補うために、例えば「組曲ドラゴンクエスト」ではファミコンのPSGだった原曲をオーケストラで演奏して、すぎやまこういちの心の中ではこんな風に響いていたんだって事をアルバムにしていたし、同様の例が多いかなと。
でも、「PREPRIMER」シリーズは違うんだよね。
最初はボクちんもそういったありがちなアルバムかなと思っていたんだけど、聴いてみて愕然だった。何故って原曲が、そのタイトルを聴いてなおどこが?って感じだったからなんだ。
それでもその何をどうアレンジしたのだか分からない楽曲の響きがとても心地よくて、何だか分からないけど凄いぞ!って直感したボクちんはライナーノーツを読んでみた。以下、「PREPRIMER」の1曲目「ヨーロッパ物語」部分を引用します。
ヨーロッパ物語は、まずフランスから始まります。霧の立ち込めるむこう側に19世紀の終焉が、まるで印象派の作風のように見えてくる「音楽」にしたつもりですが。マネやモネ、シスレー、ルノワール、ロートレックの絵画やリトグラフを思いうかべてください。おやっ、サティーやラヴェルのサウンドもちょっぴり聴こえて来ませんか?テキストとしては、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」をちょっぴり使用しております。ラヴェルの先生は「レクイエム」で大変に有名なフォーレですが、文学とか絵画的に影響を受けた作曲家は、「ジムノペディ」で人気の高いサティーだと、彼自身が言ってます。
あ、あのー、これって新種の放置プレイか何かですカ?
ひょっとして全然別のCDのライナーノーツが封入されてしまったとか、前代未聞のミスプリント発生とかそのへんにしとけやゴルァ!と当時ちょっと思ったりしましたが、やはりこれはどう考えてみてもパソコンゲーマーとは客層が違っている訳で、いきなり理解しろとゆうのはどうかと思いますが、もしー?
一方で楽曲はとても素晴らしく、不満ながらも聴いていると、ようやく分かってきました。時間軸が違うのです。
つまり、ピアノ弦楽曲として仕立てられているため-形式を保つために無関係なフレーズに紛れるようにオリジナルフレーズがあるのが気づきにくくさせていたのですが-、ゲームの中のオリジナルフレーズが遅回しになっているのです。ゲームの曲は節回しがアップテンポなので、それをそのまま古典的な楽曲に仕立てるのは難しかったという風に考えると、実に納得がいきます。
そうやって一度納得をしてしまうと、よくぞここまでオリジナルのイメージをふくらませたなぁ・・・と感心しきりでした。曲ごとに違うアイデアがふんだんに盛り込まれているし、埋もれるようにしているオリジナルフレーズを探してみたりと、それまでのゲームミュージックではなかったような聴き方をしているボクちんがそこにいたのです。
さらに芸が細かいことに、「PREPRIMER」は透き通るように静かな曲調で、そして「PREPRIMER II」では表情豊かな高揚感のあるドラマティックな曲調が目立ちます。この2枚の発売日がそれぞれ、1990/11/5、1991/7/5と季節に合わせていて、現在ではそれほど珍しさは感じないものの、今ほどゲームミュージックに注目がされていなかったという事情を考えれば実に行き届いているって言えるんじゃないかと。
それにこれは最近気づいたのですが、両アルバムともマスタリングが良くて素晴らしい音を奏でてくれます。これは、ゲームミュージック・・・てゆうか日本のCD全般に蔓延している腐れマスタリングCD事情からすればまさに奇跡に近い事なんじゃないかとも思うんだよね。
それにアレンジするにしても、少し聴いただけでは分からなくなるほど編曲し直すのは大変な労力だっただろうし、パッケージにしてもFalcom関連CDじゃないみたいな体裁だとかはそれ以上に冒険だっただろうと思う。それをここまでのクオリティに仕上げたM-FUJISAWA Pre-Projectの功績は、かつて「ビデオゲームミュージック」で細野さんが仕事のセカンドインパクトとしておいてもいいくらいだと正直思っています。
でも、この両アルバムが話題に上ることはまったくと言っていいほどないし、だからってついついこんな長文を書いてしまったりしているんだけどね。
今回紹介した2枚は、10年以上も経った今でもボクちんのゲームミュージックオールタイムベストで居続けていますし、「PREPRIMER」のシンプルながら非常に繊細な音作り、「PREPRIMER II」の駆け上がるような高揚感をともなった旋律の展開など、今でも素晴らしいとうっとりしてしまいます。
ピアノ弦楽曲なので個人的な好き嫌いはあると思いますが、ゲームミュージック史上、至高のスノッブさを誇るアルバムだとボクちんは確信しているので是非体験して欲しい。
そう言われても、さすがに10年以上前だし・・・なんて思ったそこのアナタ。実は1999年に-「PREPRIMER」だけですが-本家日本ファルコムのFMSレーベルで復刻されているのです。
しかも当時3000円だったのが、復刻版は1980円!これはお買い得ですよ、奥さん!!
なんちて久しぶりのCDレビューだけに蛇足一歩手前のゲームミュージック史をボクちんなりに書いてみたりしましたが、こんなゲームミュージックがあったんだって事でどっとはらいですだ。
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